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【書評】人生かけ磨き抜かれた話芸 『歌丸ばなし』桂歌丸著 

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【書評】
人生かけ磨き抜かれた話芸 『歌丸ばなし』桂歌丸著 

『歌丸ばなし』 『歌丸ばなし』

 81歳の桂歌丸師匠は11月22日、噺(はなし)家生活66周年を迎えた。近年は入退院を繰り返しながらも、そのたびに不死鳥のようによみがえり、高座では鶏ガラのような姿で、ダシがききながらもすっきりとした味わいの枕と噺を披露している。

 さて本書だが、入退院を繰り返す日々から生まれた枕とお気に入りの演目8席(井戸の茶碗(ちゃわん)、おすわどん、鍋草履、紙入れ、壺算(つぼざん)、つる、竹の水仙、紺屋高尾)を語りおろしたうえに、それぞれにツボをおさえた解説(裏話)を付している。枕と噺は寄席の客席で聞いているような、解説は楽屋で茶をごちそうになりながら聞いているような心地がする。語りを文字にした編集者の歌丸愛、落語愛が感じられる一冊でもある。

 冒頭の「井戸の茶碗」の枕で歌丸師匠は《入退院を繰り返しておりまして、誤嚥(ごえん)性の肺炎という診断を受けました。ハイエンな騒ぎになって……、あんまりうまい洒落(しゃれ)じゃあないですね。これはあたくしの言う洒落じゃないです。黄色いラーメン屋が言う洒落です》なんてことを語りながら、観客をテンポ良く本題にいざなってゆく。「黄色いラーメン屋」が誰かはわかりますよね。はい、林家木久扇師匠のことです。

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