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【書評】「信念の人生」を浮き彫りに 『虹 鈴木勲の「道徳復権」への挑戦』平山一城著

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【書評】
「信念の人生」を浮き彫りに 『虹 鈴木勲の「道徳復権」への挑戦』平山一城著

『虹 鈴木勲の「道徳復権」への挑戦』 『虹 鈴木勲の「道徳復権」への挑戦』

 □『虹 日本弘道会のさらなる発展のために 鈴木勲の「道徳復権」への挑戦』平山一城著

 来年は明治維新から150年である。この間の日本の政治・社会は、西欧文明の渦にのみ込まれないための苦闘の歴史といってもいいだろう。

 ことに戦後は、占領政策によって教育勅語や修身が廃止され、教育が荒廃し、伝統や文化の根幹が揺らいだ。しかし、ようやく展望が開けるかに見える。その証しが平成30、31年度からの小、中学校での「道徳」の教科化である。

 鈴木勲は戦後、文部省(現・文部科学省)の中枢で教育行政に大きな業績を挙げ、文化庁長官まで務め、退官後のいまなお、「日本弘道会」第9代会長として、日本人の教育・道徳の涵養(かんよう)に生涯をささげている。

 本書は、その鈴木の初めての評伝である。

 鈴木が会長を務める日本弘道会は、明治の思想家、西村茂樹によって141年前に創設された。国民道徳の振興、「国家の品格」の保持を訴えた精神は戦後も引き継がれ、敗戦によって生じた「道徳の空白」を埋める活動を続けてきた。学校での道徳教育復活を掲げたのもそのひとつだ。

 鈴木と評者とは、旧制第二高等学校(仙台)の山岳部からのつき合いだが、鈴木は旧制高校の「エリートの自覚」、すなわち富でも名でもなく、ただ「志」によって行動する気高さを体現している。

 初等中等教育局長のときには、歴史教科書の検定をめぐるマスコミ誤報事件で、中国・韓国の圧力にも屈せず検定制度を守り抜き、“ミスター文部省”の異名をとったことは知る人ぞ知る逸話である。

 鈴木の信条は「国の教育は『虹』のようでなければならない」。「虹」は雨上がりの空にひっそりと浮かび、見る人たちに勇気と希望を与えてくれる。教育も、そのようであってほしい、と。

 本書は樺太(サハリン)での幼少期、旧制高校からの恩師や友人との交流、文部省での活躍と豊富なエピソードを織り込み、卒寿を過ぎて(92歳)なお、歩みを止めない「信念の人生」を浮き彫りにした。

 「退官後30年にわたって日本弘道会会長を務める男の存在を広く世に知らしめたい」。著者の熱い思いが伝わる。(悠光堂・1500円+税)

 評・澤英武(評論家)

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