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【書評】法では裁けない理不尽に 『怒り(上・下)』ジグムント・ミウォシェフスキ著、田口俊樹訳

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【書評】
法では裁けない理不尽に 『怒り(上・下)』ジグムント・ミウォシェフスキ著、田口俊樹訳

『怒り(上)』ジグムント・ミウォシェフスキ著、田口俊樹訳(小学館文庫・各770円+税) 『怒り(上)』ジグムント・ミウォシェフスキ著、田口俊樹訳(小学館文庫・各770円+税)

 ポーランド発、検察官が刑事の役回りをするユニークな警察小説ミステリーだ。

 舞台はポーランド北部の地方都市オルシュティン。晩秋、凍えるような霧雨が降り続く。街にはドイツ占領時代の頑強な建物が残っている。

 物語は、工事現場で白骨死体が発見されて始まる。捜査を担当する検察官、シャツキは、現場が地下の防空壕(ごう)だったことから、戦時中のドイツ人の遺体だと高をくくった。

 だが検視の結果は「10日前には生きていた」。たった10日でどうして白骨死体になるというのか。やがて、被害者は生きたまま配水管洗浄剤で溶かされたことが分かる。誰が? 何のために? やっと探し当てた被害者の妻は、捜索願も出さず、死んだと聞いても涙ひとつ見せなかった。

 一方、「夫が怖い」と相談に来た女性を、シャツキは虐待の証拠がないと追い返すが、彼女が瀕死(ひんし)の状態で発見され、夫が行方不明になる。部下らと必死に捜査を続けるシャツキは、驚くべき真相を探り当てる…。

 細かく伏線が張りめぐらされたスリリングな展開は、さすが欧米で「ポーランドのルメートル」と言われている作者だけある。驚愕(きょうがく)のラスト、法では裁けない理不尽な家庭内暴力に、「怒り」の裁きをどう下すのか、重いテーマが突きつけられて圧巻だ。

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