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松家仁之さんの新刊「光の犬」 懸命に生きた時々の輝き

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松家仁之さんの新刊「光の犬」 懸命に生きた時々の輝き

北海道を小説の舞台に据えることが多い。「風景や人の感じとか日本じゃないような感じに憧れるのかも」と話す松家仁之さん 北海道を小説の舞台に据えることが多い。「風景や人の感じとか日本じゃないような感じに憧れるのかも」と話す松家仁之さん

 「いろんな人の人生を感じ、生き直す。そんな感覚がありました」。松家仁之さん(58)の新刊『光の犬』(新潮社)は北海道の小さな町に根を下ろした添島家の一族3代にわたる歩みをつづる長編小説。それぞれに孤独感を抱えながらも懸命に時を過ごし、世を去っていく-。普通の人々のかけがえのない生の輝きが心にしみる一編だ。

 描かれるのは、20世紀になる年に生まれ、関東大震災の後に道東の町・枝留(えだる)に移り住んだ助産師である祖母の幼少時から、50代になって東京から帰郷してきた孫の始(はじめ)の現在までの100年以上に及ぶ時の流れ。自在に移り変わる視点で一族それぞれの心情が点描され、次第に「まとまり」とはほど遠い家族の実相が浮かび上がる。

 始は父の反対を押し切って大学は文学部に進むし、縁遠い隣家の3人のおばたちと始の母との軋轢(あつれき)も根深い。幼なじみとの恋に物理学の研究にと活発に日々を過ごしながら、若くして病に倒れた始の姉・歩の最期も、身内はぎこちない形でしか見送れない。互いの距離を測りかねる人々の姿は、一家のそばで孤独に生きる北海道犬とも重なってみえる。「家族と個人の間の距離や熱量は定まってなくて、ある出来事によって急に近づいたりも離れたりもする。家族って強いものだけど一方ではもろいものでもある。そんな気持ちがこの小説の底辺にあるのかもしれない」

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