産経ニュース

長編「シュレーディンガーの猫を追って」 仏作家・フィリップ・フォレストさん 喪失の痛みと生きる

ライフ ライフ

記事詳細

更新


長編「シュレーディンガーの猫を追って」 仏作家・フィリップ・フォレストさん 喪失の痛みと生きる

来日機会は多い。「近年フランスでは日本人作家の作品が多く翻訳されるようになり、新しい発見がもたらされている」と話すフィリップ・フォレストさん=東京都港区 来日機会は多い。「近年フランスでは日本人作家の作品が多く翻訳されるようになり、新しい発見がもたらされている」と話すフィリップ・フォレストさん=東京都港区

 ページをめくるうち、周囲の世界が一変して見えてくるような本がある。フランスの作家で批評家、フィリップ・フォレストさん(55)の長編小説『シュレーディンガーの猫を追って』(澤田直・小黒昌文訳、河出書房新社)もそんな一冊だ。愛娘(まなむすめ)の死という悲痛な体験を、哲学的な考察や詩的な言葉で包み、読者を不思議な時空へいざなう。(海老沢類)

                  

 ある晩、語り手の「わたし」がいる家の庭に1匹の猫がやって来る。不意に通り過ぎた名も知らぬ猫の姿は、「わたし」に一人娘を亡くした15年以上前の古傷を思い出させる。女性や子供をめぐる人生の記憶、生と死や存在と不在をめぐる学術的な考察…。漆黒の闇に出現しては消失する猫のイメージに導かれ、「わたし」の思索は森羅万象へつながっていく。

◆並行世界へ

 「大きな展開がある小説ではない。エッセーが混ざるようなこの形式が私には合っているのかも」。そう話すフォレストさんは1996年、4歳の娘を病気で亡くしたのを契機に小説を書き始めた。「子供の死がもたらす痛みは非常に強い。世界に対する私の哀愁を帯びたかかわり方はその体験から来ている」

続きを読む

「ライフ」のランキング