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「何から筆を開くか」 山本一力さん、山本周五郎の魅力語る

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「何から筆を開くか」 山本一力さん、山本周五郎の魅力語る

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 横浜市中区の神奈川近代文学館で開催中の「没後50年 山本周五郎展」(26日まで)の記念講演会「山本周五郎と私」が10月21日、作家の山本一力さん(69)を講師に同館で開かれ、一力さんが周五郎の代表作「さぶ」と出合った思い出を交え、名手の作品の魅力を語った。

 一力さんが「さぶ」を知ったのは、社会人になって2年目のころ。雨の日の、東京都内の山手線の中だったという。女性が落涙しながら「さぶ」の文庫本を読んでいるのを目にして、その小説の存在を知った。気になって読んでみたら、「その題名と、山手線の電車の中で涙を落としていた女性が重なった」。

 「さぶ」は、主人公が小雨の中、両国橋を西から東に泣きながら渡る場面から始まる。両国橋の東西の意味を説明した上で、「短い段落の中で、これから何が起きようとしているのかを描いているのです」と語った。

 直木賞受賞作「あかね空」など時代小説を多数発表している一力さん。「小説というのは、どれだけ読者を呼び込んでいくか。これが今、自分が物書きになって思うこと。何から筆を開くか、どういう場面を頭の中に描いてその場面を描くか」と、日々の執筆で心を砕いていることを交えながら思い入れたっぷりに話した。

 さらに、川端康成や池波正太郎ら、自身が敬愛する作家の文章にも触れ、「短いというのは作家の技だと思う」と語った。(櫛田寿宏)

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