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【大学ナビ】AI時代に学ぶ 「使う」人材輩出が使命

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【大学ナビ】
AI時代に学ぶ 「使う」人材輩出が使命

手を添えているのはトヨタから提供を受けている生活支援ロボット「HSR」=東京都町田市(関厚夫撮影) 手を添えているのはトヨタから提供を受けている生活支援ロボット「HSR」=東京都町田市(関厚夫撮影)

 □玉川大学「先端知能・ロボット研究センター」岡田浩之主任教授

 AI(人工知能)という言葉が生まれてから約60年。現在は「第3次ブーム」のまっただ中とされる。いったいAIはどこまで進化し、大学や学生はどう向き合ってゆけばよいのだろうか。その答えを探しにまずは玉川大学(東京都町田市)の学術研究所「先端知能・ロボット(AIBot)研究センター」を訪ねた。(編集委員・関厚夫)

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 「当センターは工学部に新設された情報通信工学科とともに今春、誕生しました。もともと本学の脳科学研究所で赤ちゃんとロボットを対象にして、人間というものの知能が発達するメカニズムの解明に取り組んでいたことを発展させ、独立したという側面があります。今後もロボットとAIと脳科学という、今のところ他の大学にはできない分野を中心に研究を進めてゆくつもりです」

 AIBot研究センターの岡田浩之主任教授(センター主任)はそう話す。「アルファ碁」や株取引、そしてスピーカー…。AIの活用は猛烈な勢いで広がっているように見える。が、岡田教授はAIの思わぬ“弱点”を指摘する。

 ◆長所と短所

 「AIを活用したソフトは囲碁や将棋のトップ棋士を打ち負かしています。でも、囲碁のソフトには将棋はできない。今のAIは何か一つのことにはすごいけれど、その他のことは何もできない。人間は逆で、囲碁も将棋もオセロもできる。さらにいろんなことに気配りができ、さまざまな状況に応じて行動できます。われわれが生活の中で何げなく当たり前のように行っていること、それがAIにとっては非常に難しいのです」

 過去のAIブームを概観すると第1次(1950年代後半~60年代)ではコンピューターによる「推論」「探索」が可能となり、第2次(80年代)ではコンピューターが「知識」を得た。そして近年の第3次のキーワードは「機械学習」やその一手法「ディープラーニング(深層学習)」だ。

 岡田教授によると、第3次ブームの特徴は「成功例がソフトをハードから切り離したケースばかりであること」だという。たとえて言えば、「成功の木」に実っているのは「アルファ碁」に代表されるAIソフトで、ソフトとハード(ロボット)が融合した「アトム」や「ドラえもん」については、その実りはかなり遠い将来のことになるという。

 「われわれはロボットとAIとは本来一緒であるべきだと考えています。一方で人間という存在は、AIとハードが一緒になった理想的な形といえます。ですから本学では人間の脳を合わせて研究し、たとえゴールはかなたであってもAIで制御するロボットの開発に尽力するつもりです」

 ◆「アトム」もロボ杯も

 そんな岡田教授は長く、教育・研究の一環として玉川大チーム「eR@sers」を指導している。同チームは家庭内でのロボット利用を想定した「@ホームリーグ」でロボカップ世界大会を2度制覇。今夏の名古屋での世界大会でも準優勝に輝いている。

 現在のチームには新入生から博士号を持つ30歳前後の研究員まで約10人が所属。ハードはトヨタから提供を受け、ソフトの開発に励んでいる。希望があれば他学部の学生も受け入れており、過去には「ロボットに絵を描きたい」と参加してきた芸術学部生もいた。

 「大会で好成績を収めるためには1人のプログラミングの天才がいればいい-わけではありません。チームワークや熱意、本学や日本を代表しているという意識、また先ほどの話ではないですが、何げないところに手が回るためには頭数といった要素が意外と大事になってきます。年によって多少ばらつきはありますが、今のチームは来年が楽しみです」

 「アトム」や「ドラえもん」の話は別として、AI時代はすでに到来している。「これからは文系・理系を問わず、AIを使いこなすことが大学での学びに求められています」と岡田教授は語る。

 「たとえば数学は数世紀前までは研究の対象で、数学を学ぶ人は数学を研究する人でした。でも、生きてゆくうえで計算することが必要になり、みんな当たり前のように算数や数学を勉強するようになりました。今のAIに関して言えば、答えが勝手に出てくるといった簡単なものではなく、どんなデータを入れたらどんな答えが出てきたか、そしてその答えがいいか悪いかを吟味しなくてはなりません。だから算数や数学の歴史と一緒で、AIを使えるような人材を育てることが、われわれ大学人の使命だと考えています」

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