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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】〈12〉そんなに慌ててどこへゆく?

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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】
〈12〉そんなに慌ててどこへゆく?

【座間遺体遺棄事件】9人の遺体が発見された白石隆浩容疑者が住んでいたアパートの近くには、たくさんの花束や飲み物などが供えられていた=7日午前、神奈川県座間市(寺河内美奈撮影) 【座間遺体遺棄事件】9人の遺体が発見された白石隆浩容疑者が住んでいたアパートの近くには、たくさんの花束や飲み物などが供えられていた=7日午前、神奈川県座間市(寺河内美奈撮影)

 すぐさま書店で購入し読み始めた。

 「盲ろう」とは見ることも聞くこともできないこと。昭和37年、神戸市に生まれた福島さんは、9歳で視力、18歳で聴力を失った。周囲の人々の助けを借りながらいくつものバリアを突破し、現在は東大先端科学技術研究センターの教授を務め、バリアフリーの研究に取り組んでいる。本書は新聞記者の生井(いくい)久美子さんが福島さんを追いかけ、寄り添いながら考えたことを記したものだ。

 光と音のない世界に置かれた福島さんにとって、一番の苦痛は「見えない、聞こえない」ことそのものではなく、「人とコミュニケーションができないこと」だったという。生井さんは福島さんからこんな言葉を引き出す。

 「コミュニケーションは魂にとっての酸素、水。それなしではまるで『牢獄(ろうごく)』にいるようです」

 福島さんを「牢獄」から解き放ったのは、あることでいらだつ福島さんを見て母が思いついた「指点字」だった。生井さんは「指点字」誕生の瞬間をこう記している。

 「点字は六つの点の組み合わせで五〇音などを表す。点字のタイプライターは、両手の人さし指、中指、薬指を使って打つ。それと同じように息子の指先に打ってみた」

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