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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】〈12〉そんなに慌ててどこへゆく?

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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】
〈12〉そんなに慌ててどこへゆく?

【座間遺体遺棄事件】9人の遺体が発見された白石隆浩容疑者が住んでいたアパートの近くには、たくさんの花束や飲み物などが供えられていた=7日午前、神奈川県座間市(寺河内美奈撮影) 【座間遺体遺棄事件】9人の遺体が発見された白石隆浩容疑者が住んでいたアパートの近くには、たくさんの花束や飲み物などが供えられていた=7日午前、神奈川県座間市(寺河内美奈撮影)

あわてなくてもいずれみんな死ぬ

 ずいぶん前のことだ。人生のけじめのつけかたとして、私自身が自殺をオプションとして考えているとコラムニストの上原隆さんに話したことがあった。上原さんは困惑しながらも、「哲学者の須原一秀さんという人が遺書として書いた『自死という生き方-覚悟して逝った哲学者』(双葉社)という本があるから読んでみたら」と言ってくれた。

 哲学者として著作を数冊刊行し、健康や家族にも恵まれていた65歳の須原さんは平成18年、同書の原稿を残し神社で首をつった。人生に影が差す前に死んでいったのだ。

 早速購入して読了したものの、うまく咀嚼(そしゃく)できないまま時間が過ぎていった。神奈川県座間市で起きた自殺サイトがカギと見られる事件をきっかけに同書を思い出し、なんとはなしにアマゾンのレビューを眺めてみた。高評価が多いなかで、最低評価を付けた長文のレビューがあった。

 そこには「『ゆびさきの宇宙 福島智・盲ろうを生きて』(岩波現代文庫)という本がある。世界で初めての盲ろうの大学教授、福島智のインタビューをもとにした評伝である。考えてもみてほしい。この世界には、目も見えず、耳も聞こえないのになお『自分の人生』を生きている人だっているのだ。彼のたたかい、彼の経験、彼のことばが、どんなに深く広がりのある世界を私たちにもたらしてくれることだろう」とあった。

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