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【白洲信哉 旅と美】多彩な黄葉、もう一つの原風景(白神山地)

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【白洲信哉 旅と美】
多彩な黄葉、もう一つの原風景(白神山地)

白神ライン津軽峠付近には、ブナの巨木が立ち並ぶ「ふれあいの径(みち)」があり、悪路だが駐車場から比較的楽に散策できる=10月25日、青森県西目屋村 白神ライン津軽峠付近には、ブナの巨木が立ち並ぶ「ふれあいの径(みち)」があり、悪路だが駐車場から比較的楽に散策できる=10月25日、青森県西目屋村

 日本の原風景というと、水田地帯をまず思い浮かべる。それは記紀に書かれたように、長らく都が置かれた京や奈良からみた稲作中心の歴史観である。

 1万年以上続いた縄文時代は、東日本の人口は多く、狩猟中心だが、栗の林は計画的に栽培され、ドングリなど落葉広葉樹の実や、山菜の採取、熊やサケ・マスといったタンパク質も得られ、約1500年間にわたる定住の場もあった。

 多くの恵みを与えた森は、神とあがめられ、「白神」という名を博したのであろうか。最後の森の姿というその下草は、笹や腐葉土で覆われ、木肌をコケや葉から雨が滴り落ちるのか、川のように黒ずんでいた。ブナの実は豊作の年と不作の年を交互に繰り返し、数年に1度、大量の実を落とし、種の保存も図るという。

 森そのものが確固たる意志を持った大きな水がめであり、1種類というのだが、複雑な木形と多彩な黄葉は、柔らかな秋の光に反射して夢のように美しかった。関東以西のカシやクスといった昼なお暗い照葉樹林中心の文化に親しんだ僕は、明るいブナの林に出合い、忘れられたわが国の、もう一つの原風景に接したような気がした。

【プロフィル】白洲信哉

 しらす・しんや 文筆家。昭和40年生まれ、東京都出身。日本文化の普及に努め、展覧会など文化イベントの制作にも携わる。平成25年から骨董(こっとう)・古美術の月刊誌『目の眼』編集長。

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