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【話の肖像画】ドイツ文学者・中野京子(1) 本物を見なくちゃ分からない

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【話の肖像画】
ドイツ文学者・中野京子(1) 本物を見なくちゃ分からない

中野京子さん(川口良介撮影) 中野京子さん(川口良介撮影)

 〈絵はただ感じるまま見るのではなく、描かれた歴史、人物、物語を理解して“読む”と、もっと面白い-。絵画の見方に一石を投じたベストセラーシリーズ「怖い絵」の著者。初巻刊行10周年を記念し、上野の森美術館(東京都台東区)で開催中の「怖い絵」展では特別監修を務める。そもそも“美術エッセーの名手”はいかにして、絵画の奥深い世界へと分け入ったのだろうか〉

 育ったのは北海道です。絵は子供のころから好きで、自宅にあった画集をよく眺めていました。ただ田舎なので、たまに札幌で展覧会を見るほかに、本物の名画に触れる機会はありませんでした。

 ある時、家にある画集と学校の図書館にある画集を見比べて、気付いた。画家の代表作といっても、本によって選定は違う。例えばセザンヌの場合、リンゴの静物画を選ぶか、「サント・ヴィクトワール山」を選ぶかで、印象は変わりますよね。

 さらに驚いたのは、同じ絵でも画集によって色がまちまちだということ。紙の質や印刷技術が今より低かったのでしょう。数種類を見比べても、どれが本当の色なのかわからない。インターネットで画像検索もできない時代。やはり本物を見なきゃと、大学進学で東京に出るとすぐ、ブリヂストン美術館や国立西洋美術館などに向かいました。実際、本物を前にして初めて、いろんな謎が解けた。

 〈大学時代に、欧米の主要美術館はほぼすべて見て回ったという〉

 パリのルーブル美術館を初訪問した際、念願かなって中世フランスの宗教画「アヴィニョンのピエタ」(正式名「ヴィルヌーヴ=レ=ザヴィニョンのピエタ」)を目にした瞬間、強いショックを受けました。というのも、私の記憶の中ではほぼ真四角の画面だったのが、なぜか横長なんです。

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