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【書評】書評家・西野智紀が読む『かがみの孤城』辻村深月著 生きてさえいれば奇跡は起きる

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【書評】
書評家・西野智紀が読む『かがみの孤城』辻村深月著 生きてさえいれば奇跡は起きる

『かがみの孤城』辻村深月著(ポプラ社・1800円+税) 『かがみの孤城』辻村深月著(ポプラ社・1800円+税)

 昨今、辛(つら)い目にあったり理不尽なことをされたりしたら、とにかく逃げろと、盛んに言われるようになった。そのとおりなのだが、これは生きる術(すべ)を多く知っている大人の理屈である。学校と自宅周辺ぐらいしか世界を持たない子供にとっては、逃げ場を見つけ出すのは容易ではない。本書は、そうした子供たちを主役とした小説だ。

 中学に進学したばかりの安西こころは、同級生から受けた仕打ちで、不登校が続いていた。母親に紹介された子供育成支援教室にも行けなくなり、部屋に籠る毎日。ところが5月のある日、突然自室の鏡が光り輝く。少女の声に導かれて、鏡を抜けた先には、西洋の童話で見るような城と、同じ年頃の子供6人が待っていた。

 子供たちを連れてきた、仮面の少女「オオカミさま」の説明を要約するとこうだ。この城の奥には「願いの部屋」がある。お前たち7人にはその部屋に入るための鍵探しをしてもらう。期限は今から来年の3月末まで。また、この世界と現実の世界は行き来自由だが、城にいられるのは朝9時から夕方5時までで、時間厳守。城には各自の部屋も用意してあるから、好きに使うといい…。

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