産経ニュース

【ノーベル賞】カズオ・イシグロ氏、文学賞受賞 日本的無意識、自然に浸透 巽孝之・慶応大学教授

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【ノーベル賞】
カズオ・イシグロ氏、文学賞受賞 日本的無意識、自然に浸透 巽孝之・慶応大学教授

5日、ロンドンで記者会見する英国人作家、カズオ・イシグロ氏(共同) 5日、ロンドンで記者会見する英国人作家、カズオ・イシグロ氏(共同)

 とはいえイシグロ自身は海洋学者の父親の転勤の関係で5歳にして渡英して帰化し、エミリ・ブロンテやジェイン・オースティン、チャールズ・ディケンズらに傾倒しつつ、作家批評家、マルコム・ブラッドベリや幻想小説家、アンジェラ・カーターに師事してきた人物である。以後のイシグロは一作ごとに新境地へ挑戦し、『充たされざる者』(95年)ではカフカ的不条理小説、『わたしたちが孤児だったころ』(2000年)ではシャーロッキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的なファン)だった背景を生かして探偵小説、『わたしを離さないで』(05年)ではオーウェル的ディストピア(反理想郷)小説、『忘れられた巨人』(15年)ではアーサー王伝説に根ざすヒロイック・ファンタジー小説をそれぞれ試み、ジャンルの上でもハイブリッド化を図り、それら諸作はいずれも現代英文学の正典となっている。

 個人的には、ヴィクトリア朝以来の紳士的伝統を体現する『日の名残り』が一番好きだ。執事スティーブンスは、ふたつの世界大戦による世界の変容とともに人生への諦念を切々と語る。その過程で、執事が忠誠心の限りを尽くしたイギリス貴族が最終的には戦時中のナチスドイツへの加担により名声を失い、戦後には新たに屋敷を継いだアメリカ人に仕えるようになったという歴史の皮肉が浮き彫りになる。

続きを読む

このニュースの写真

  • カズオ・イシグロ氏、文学賞受賞 日本的無意識、自然に浸透 巽孝之・慶応大学教授

関連トピックス

「ライフ」のランキング