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【書評】書評家・大矢博子が読む『盤上の向日葵』柚月裕子著 壮絶な現代版「砂の器」

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【書評】
書評家・大矢博子が読む『盤上の向日葵』柚月裕子著 壮絶な現代版「砂の器」

『盤上の向日葵』柚月裕子著(中央公論新社・1800円+税) 『盤上の向日葵』柚月裕子著(中央公論新社・1800円+税)

 藤井聡太四段の快進撃や、『聖の青春』『3月のライオン』の映画化など、このところ将棋の話題が続いている。そして今度は、将棋がモチーフのミステリが登場だ。

 舞台は平成6年、山形県天童市。将棋のタイトル戦が行われている会場を刑事が訪れる--『盤上の向日葵』はそんな序章で幕を開ける。

 次の章からは時間が巻き戻され、山中で発見された白骨死体の謎を追う警察の捜査の様子と、昭和40年代に始まる将棋好きの少年の物語が交互に語られる。このふたつの筋が合流し、序章の場面へつながるという構成だ。

 これがもう、読み出したら先が気になって止まらない。

 捜査パートの核は、白骨死体と一緒に600万円もの価値がある将棋の駒が埋められていたこと。名匠の手による駒で数が限られるため、警察はそのすべての存在を確認するため、駒の流れを追う。そのくだりはまさに足で調べる警察捜査の醍醐味(だいごみ)たっぷり。

 一方、将棋少年のパートは切ない物語だ。母を亡くし、父に育児放棄と虐待を受ける9歳の少年が、親切な夫婦に出会って将棋を学ぶ。少年の才能に驚いた師はプロになるための援助を申し出るが、少年は父親を見捨てられない。

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