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校正の達人…集めた辞書6000冊

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校正の達人…集めた辞書6000冊

辞書研究者、境田稔信さんの自宅は部屋全部が本棚だった 辞書研究者、境田稔信さんの自宅は部屋全部が本棚だった

 フリー校正者、境田稔信(としのぶ)さん(58)は自宅マンションに国語辞典、漢和辞典を中心に6千冊以上を所蔵している。個人ではおそらく日本一。その充実したコレクションは辞書が言語文化を支えていることを教えてくれる。

 玄関、廊下…あらゆる空間が辞書の詰まった棚で埋め尽くされている。集め始めたのは必要に迫られて。校正の仕事では昔の言葉遣いなど現行の辞書で確認できないこともあるからだ。

 希少本も多い。中国で刊行された初版に近い「康煕字典」は、JIS規格の参考にされているという。数が多いのは現代の国語辞典の元祖とされる「言海」で、版違いや刷数違いが260冊。「言葉は変化するもので、辞書に載るのは定着したということ。たとえば『ゆかた』は明治の辞書を引くと漢字がなかったり、『湯帷子』と記されていたりする。次第に『浴衣』になっていく。そうやって変化を追うと、言葉がどう変わってきたかがわかるんです」

 普段は校正を仕事にする境田さんは、辞書のことを知り尽くした研究者として出版社やメディアから頼られる存在。今秋刊行予定の漢和辞典『角川新字源』の23年ぶりの全面改訂にも携わった。「担当したのは文字の形のチェック。漢字は『形・音・義』が重要ですが、使う字体によってハネるとかハネないとか微妙に違う。資料を当たって、何年版の辞書にはこう載っていて何年版はこうだと、判断の根拠になる具体例を示すのが校正の仕事です」

 辞書の達人ならではの仕事だろう。「辞書を通じて見えてくることがたくさんある。印刷の変化、書籍の変化、いまの辞書の問題点…。こうしてほしいと思うことを、読者の目線でいろいろ言わせてもらっています」(篠原知存)

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