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【文芸時評】原稿の分量いまだにワード換算しない文芸誌 若者に開かれているか 10月号 早稲田大学教授・石原千秋

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【文芸時評】
原稿の分量いまだにワード換算しない文芸誌 若者に開かれているか 10月号 早稲田大学教授・石原千秋

早稲田大学教授・石原千秋氏 早稲田大学教授・石原千秋氏

 東京は三軒茶屋にある世田谷パブリックシアターで舞台「謎の変奏曲」(エリック=エマニュエル・シュミット作・岩切正一郎訳・森新太郎演出)を観た。みごとな対話劇で、今年の収穫の一つに入る。

 北欧の島で遁世のような生活を送るノーベル賞作家(橋爪功)のもとへ、地方紙の文芸記者(井上芳雄)が取材に来る。記者は、書簡集の形式をとっている新作が実際の体験を元にしているのではないかと執拗(しつよう)に問う。作家は言い放つ。「レストランで食事をするのに、厨房(ちゅうぼう)から入るかね。ゴミ箱をあさるかね」と。文学は作家の実体験とは無関係だと、テクスト論のような立場だ。記者は作家論の立場だ。僕はテクスト論派だから、このたとえに膝を打った。もちろん、料理人がどんな素材を使っているのか、素材のどこを捨てたのか、そういう作家論に価値がないなどと言っているわけではない。この対話劇の作家の台詞(せりふ)はこうしたレトリックに満ちあふれていると言いたいだけだ。レトリックでは修辞学の発展したアルファベットの国の言葉に日本語はとてもかなわないと、芝居を観て思う。

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