産経ニュース

【書評】神戸大学名誉教授・吉田一彦が読む『中国はなぜ軍拡を続けるのか』阿南友亮著 汚職蔓延する解放軍 民衆の目そらすため外国へ復讐心煽る

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
神戸大学名誉教授・吉田一彦が読む『中国はなぜ軍拡を続けるのか』阿南友亮著 汚職蔓延する解放軍 民衆の目そらすため外国へ復讐心煽る

阿南友亮著『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮選書) 阿南友亮著『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮選書)

 毛沢東の「革命は銃口から生まれる」という言葉に象徴されるように、中国人民解放軍は中国共産党の軍隊であって国軍ではない。従って共産党独裁の危機となれば、解放軍は容赦なく人民に対して牙をむく。この解放軍の静態と動態を極めて興味深く解き明かしたのが本書である。

 天安門事件で露呈したのは、主権から切り離された民衆と共産党との間には癒やしがたい不信と緊張関係が存在する事実である。天安門後にこの対立はほぼ中国全土に拡散し、慢性化した。その結果、デモ、暴動、テロといった群体性事件(集団的非合法活動)の発生は、年間20万件に達するとされている。

 トウ小平による「改革・開放」は経済発展で国力増強を図り、一般民衆の生活向上に資することが目標であった。しかし議会制民主主義を有しない一党独裁体制下で市場の開放を進めた結果、矛盾と混乱が発生した。確かに裕福な層は生まれたが、それは例外なく党と結託しての所産であった。その結果、1980年代を通じて共産党は拝金主義に汚染されていった。

 このことは共産党の用心棒である解放軍とて例外ではなく、彼らは自前の企業経営に乗り出した。その結果、広範囲な企業連合が造り出され、解放軍は巨大な集金マシンと化したのである。それによって得られた利益は、為替市場や株式市場で運用されて莫大(ばくだい)な利益を解放軍にもたらした。軍の上層部は「赤い億万長者」に変身し、当然の帰結として汚職が蔓延(まんえん)した。

続きを読む

「ライフ」のランキング