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【手帖】驚異の野球場訪問記

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【手帖】
驚異の野球場訪問記

『全国野球場巡り877カ所訪問観戦記』斉藤振一郎著(現代書館・4600円+税) 『全国野球場巡り877カ所訪問観戦記』斉藤振一郎著(現代書館・4600円+税)

 鉄道マニアが全路線踏破を目指したりするのと同じ。〈私の旅はその野球版だ〉と著者は記す。北海道から沖縄まで、全国各地の野球場を訪問して、その記録を一冊にまとめた『全国野球場巡り 877カ所訪問観戦記』斉藤振一郎著(現代書館・4600円+税)は、空前絶後の本だ。ただ訪ねるだけじゃない。そこで野球の試合を観戦してスコアをつける、という条件を自らに課して、なんと27年かかっている。

 球場名、所在地、球場の規格(両翼90メートルとか)、内外野の芝生の有無、照明設備の有無、観戦した試合の結果が書かれ、戦評ならぬ球場評が球場の写真とともに記されている。プロ野球が開催されるような有名な球場だけでなく、中高生が試合をしている小さな球場まで踏破しているが、著者は野球に関係のある仕事をしているわけではなく、費用もすべて自腹。これぞ労作だ。

 野球ファンは多くても、野球場ファンというのはあまりいないかも…と心配になりつつも、淡々とした短い文章が、読んでいるうちにじつに味わい深く感じられてくる。人名を冠した球場、津波で消えた球場、バラエティー番組に登場した球場、延長45回という伝説的な試合があった球場…さまざまなエピソードが登場する。暴風雨の中で強行された秋田県社会人リーグ戦をたった1人で観戦する(21対0で7回コールド)記述など、名場面と呼びたくなった。

 野球というスポーツがどれだけ日本に根付いているかという文化論としても読めるかもしれない。著者は「全球場踏破」を目指して旅を続けている。(篠原知存)

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