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【書評】慶応大学教授・巽孝之が読む『アメリカン・ウォー(上下)』オマル・エル=アッカド著、黒原敏行訳 世界史動かした家族の物語

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【書評】
慶応大学教授・巽孝之が読む『アメリカン・ウォー(上下)』オマル・エル=アッカド著、黒原敏行訳 世界史動かした家族の物語

『アメリカン・ウォー(上下)』オマル・エル=アッカド著、黒原敏行訳(新潮文庫・各630円+税) 『アメリカン・ウォー(上下)』オマル・エル=アッカド著、黒原敏行訳(新潮文庫・各630円+税)

 21世紀後半、第二次南北戦争が勃発する。アメリカ合衆国では地球温暖化による環境破壊が深刻なものとなり、沿岸地域が水没するという危機に見舞われたため、ダニエル・キ大統領が石油使用を全面的に禁じ、それに猛反発した合衆国脱退主義者に暗殺されたのが一因だった。

 北部は太陽光や風力、核分裂などの代替エネルギーを採用していたが、依然として化石燃料中心のミシシッピ、アラバマ、ジョージアの諸州は自由南部国として独立宣言を下す。そこへ援助の手を差し伸べたのが、かつて対米関係が緊張していた中東とアフリカ北東部に広がる諸国を統合したイスラム系統一国家ブアジジ帝国。かくして自由南部国は、北部アメリカ合衆国に対し自爆テロをくりかえす。アメリカが関与する戦争である限り、最終的に世界規模(「みんなのもの」)にならざるをえない。かくして第二次南北戦争は2074年から95年まで約20年間続き、ようやく〈再統合の日〉を迎える…。

 この展開だけ読めば、いかにもトランプ政権下の国内外で緊張が高まり分断化の進む現代アメリカのシミュレーション小説のように聞こえるかもしれない。しかし、この若手エジプト系米国人作家が今年発表して大反響を呼んでいる本書が最終的に織り上げるのは、壮大な世界史を背後から動かしたひとつの感動的な家族史である。

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