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【書評】作家・明野照葉が読む『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著 鰻、天ぷら、おしるこ…隻腕の美剣士が堪能した食の軌跡

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【書評】
作家・明野照葉が読む『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著 鰻、天ぷら、おしるこ…隻腕の美剣士が堪能した食の軌跡

『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著 『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著

 《鯛を求め、代金は二尾で一分》(現在の価格で約2万5千円!)など、物価をはじめ、当時の生活ぶりもリアルにわかる。揚げ句に赤貝にあたったとみえ、肝心のお勤めを長々休んだりもしている。そんな八郎に幕臣仲間もやさしく、カステラ、羊羹(ようかん)などを手に、盛んに見舞いに訪れている。勤めは4日に1日とゆるく、幕臣たちは存外のんびりしていたことに驚かされる。まだまだ、260年にもわたる徳川の天下は永劫(えいごう)という夢の中だったか。

 その後の八郎を思うと拍子抜けするような日記だが、一方で心慰められる思いも。幕末の志士の多くが命を散らし、その生涯の短さには胸が痛むが、彼らにも彼らの青春の喜びのごときものがあったのだと知らされるからだ。

 本書は、「征西日記」全文を現代文にして収録。著者の解説も詳細で、当時の状況がよくわかる。動乱の時代に壮絶な最期を遂げた八郎の、短くも華やいでいた都での春をともに喜びたい。(幻冬舎新書・780円+税)

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