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【書評】作家・明野照葉が読む『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著 鰻、天ぷら、おしるこ…隻腕の美剣士が堪能した食の軌跡

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【書評】
作家・明野照葉が読む『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著 鰻、天ぷら、おしるこ…隻腕の美剣士が堪能した食の軌跡

『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著 『幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む』山村竜也著

 江戸幕末の隻腕の美剣士、伊庭八郎をご存じだろうか。箱根山崎の戦で左腕を失いながら旧幕軍として箱館・五稜郭に入るが、被弾の果てに落命。享年26だった。

 本書が収める「征西日記」は、八郎21歳の元治元(1864)年、将軍・家茂の警護方として上洛したときのもの。大政奉還まであと3年、尊王攘夷(じょうい)派、倒幕派らが、しのぎを削っていた頃。さぞかし、熱い攘夷の思いや佐幕の志に満ちた日記だろうと思いきや、《三月八日、嵐山は桜が盛りで景色がよかった。二条通りで川魚を食べた》-。終始こんな調子で、政(まつりごと)の話は出てこない。在京幕臣との交遊、観光、グルメ、ショッピング…今ならインスタグラムに写真をアップしていそうな、何とも暢気(のんき)な日記なのだ。

 時まさに、京都では新撰組が町を闊歩(かっぽ)するなか、八郎は金閣寺、延暦寺、鞍馬寺…と精力的に出かけては鰻、鮎、どじょう、あひる、天ぷら、おしるこ…と、実にいろいろなものを食べている。初めて給料取りになっての京都とあって、心弾む思いだったのだろう。

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