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【ゆうゆうLife 家族がいてもいなくても(514)】家族を映す旅のてんやわんや

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【ゆうゆうLife 家族がいてもいなくても(514)】
家族を映す旅のてんやわんや

 当時は、マイカーなんてものもなく、子連れの家族旅行は大変だったろうと思うが、なぜか懲りずに出掛けていた時期があった。

 まるで、「ちゃんと家族をやっていましたよ」という証拠のように、当時の写真が残っている。

 まだ若い父が、写真に凝っていて撮りまくっていたのだ。子供たちは、母の手作りの服を着て、澄まして写っている。

 でも、そんな家族そろっての旅行ができたのは、実は、私が9歳まで。時はあっという間に過ぎ、子供は、育った順に家を出て自立。私などは、いきなり家出までしてしまった。親の方も転勤を繰り返し、気が付いたらわが家族は、ばらばらになっていた。

 よく、家族としての幸せな光景として、「一家だんらん」と言うけれど、実際にそういう麗しい時期がわが家にあったのかなあ、と思っても記憶は定かではない。

 今回の家族旅行は、ちょうどお盆の時期だったせいもあり、こちらと同じ3世代の旅行が思いのほか多く、ちょっと驚いてしまった。

 家族がそろえば、もめ事も生じる。レストランの席で、義父と娘婿らしい男2人が、どちらが車の運転をするかでやりあっていて、そばで義母がはらはらしている様子などにも遭遇した。でも、こういうてんやわんやこそが、家族の一体感を記憶に残す華の時期なのよねえ、とわが身を振り返り思わず笑いがこみ上げてきたのだった。(ノンフィクション作家・久田恵)

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