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【話の肖像画】デザイナー・皆川明(1)日常のための特別な服を セールにして終わりではもったいない

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【話の肖像画】
デザイナー・皆川明(1)日常のための特別な服を セールにして終わりではもったいない

デザイナー・皆川明さん(伴龍二撮影) デザイナー・皆川明さん(伴龍二撮影)

 〈手作業で図案を描き、オリジナルの生地を生み出すことから始まる丹念な服作りで世界を魅了する。精巧に組み合わせられたプリントや織り、繊細な表情をたたえた刺繍(ししゅう)の一つ一つに深い思いが込められている〉

 私はいつも暮らしの中にあって、愛着を持って長く着続けることのできる服を作りたいと考えています。日常のための特別な服でありたいのです。私は丹精を込めて手元から一つ一つ生み出されるものに、貴さやいとおしいまでの意味を見いだして、ただただ服を作りたいと仕事を始めました。

 作り手の思いや日々の観察がイメージと結びつき、デザインに入り込んでいきます。言葉やイマジネーションといった人間の思考が、形をなしていくことがおもしろいのです。見たものをそのまま写し取ることはしません。そこには想像や記憶の力が働いています。服を作ることは、小説や詩を書くことに通じていると感じています。合理的な説明書や辞書とは違う価値を持っていたいのです。

 それを実際の服として実現するために、染めをどうするか、生地をどう織ってもらうのか、どのような刺繍にすべきかを追い求めていくのです。そうして出来上がった服が、手にした人の心を動かし、その人の記憶のようなものと結びついていくのです。服作りは着る人の喜びがあって初めて成立するものではないでしょうか。愛情を自然とわき立たせることができるならば、それは本当に幸せなことです。

 〈1年を春と夏、秋と冬の2シーズンに分け、半年ごとの短いサイクルで全てが置き換えられていくファッション界の在り方とは一線を画した取り組みでも注目を集める〉

 流行を追うことは、一つの条件の下で競争することにつながっていきます。私は競争の中に身を置くのではなく、自分自身の求めるものが誰かしらの共感を呼び、それがずっとつながっていくもの作りがしたいのです。そこでは社会の大きな部分と関わっていく必要はなく、争うことにもなりません。自分ができる最善を尽くすことに専念するだけです。

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