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【書評】ノンフィクションライター・柳澤健が読む『広辞苑はなぜ生まれたか』新村恭著 誰もが知る辞典 編者の生涯にスポット 谷崎潤一郎、湯川秀樹らとも交流

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【書評】
ノンフィクションライター・柳澤健が読む『広辞苑はなぜ生まれたか』新村恭著 誰もが知る辞典 編者の生涯にスポット 谷崎潤一郎、湯川秀樹らとも交流

『広辞苑はなぜ生まれたか』 『広辞苑はなぜ生まれたか』

 昭和の頃、応接間のある家ならば、書棚には新村出編「広辞苑」(岩波書店)が必ず備えられていただろう。

 家庭向けの中型国語辞典で、百科項目も多く入った戦後のベストセラー。本書は広辞苑制作秘話というよりも、むしろ編者・新村出の生涯を詳細にたどったものだ。

 著者は研究者でも書き手でもなく、新村出の末孫である。プロの文章ではないが、新村家に残された膨大な資料および書簡を駆使して、明治初期に生まれ、「スロー・バット・ステディ(急がば回れ)」を信条とする国語学者の興味深い生涯を描き出すことに成功している。

 私たちは新村出について、何ひとつ知らない。そもそも名前すら知らない。「にいむらいづる」ではなく「しんむらいづる」だと聞いて驚くのは私ひとりではないはずだ。

 新村出の父・関口隆吉は幕臣で徳川慶喜の側近であったが、維新後山口県令、すなわち県知事となった。

 山口で生まれた次男の関口出は、現在でいう小学校低学年の頃から漢文で書かれた史書、頼山陽の「日本外史」などの講義を受け、小学校高学年の頃には千葉県佐原の漢学塾に放り込まれた。テキストは四書五経である。

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