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【産経抄】今年はまだ入道雲を見ていない 8月17日

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【産経抄】
今年はまだ入道雲を見ていない 8月17日

ぐずついた天気が続き、閑散とするプール=16日、東京都練馬区の「としまえん」(松本健吾撮影)657 ぐずついた天気が続き、閑散とするプール=16日、東京都練馬区の「としまえん」(松本健吾撮影)657

 東北地方の農家は昔から「ヤマセ」に苦しめられてきた。夏にオホーツク海高気圧から吹き出してくる、冷たくて湿った風である。山を越えて吹く風、「山背」が語源とされるが、異論もある。低温と日照不足をもたらし、冷害の原因となる。

 ▼「サムサノナツハ オロオロアルキ…」。幼い頃から農家の苦労を見てきた宮沢賢治にとって、憎むべき風だったろう。賢治の作品にさまざまな風が登場するのは、「飢餓風」とも呼ばれたヤマセへの関心がきっかけではないか。日本気象予報士会元会長の石井和子さんがコラムに書いていた。

 ▼今月に入って、関東地方と東北の太平洋岸で雨や曇り空が続いている。ギラギラした太陽が遠ざかっているのもヤマセの仕業である。仙台管区気象台によると、日照時間が平年の2割に満たない地点も少なくない。思い出すのは、平成5年の夏の寒さである。

 ▼この年は大変な凶作となり、小売店からコメは消え、農協の倉庫で盗難事件が相次いだ。タイなどから緊急輸入でしのぐことになり、なじみのないコメのおいしい炊き方が話題になった。一方で、米価格が急騰したタイには、多大な迷惑をかけた。なりふりかまわずコメをかき集めたあげく、余らせるという、お粗末な結果となった。

 ▼まさか「平成の米騒動」の再来はないだろう。ただ、キュウリやナスなど野菜の値段がすでに上がっている。海水浴場やプールなどレジャー施設の関係者も頭を抱えているに違いない。関東地方は、来週には夏空と残暑が戻るそうだが、東北地方の太平洋側の天気が回復するのは、8月の最終週にずれ込むもようである。

 ▼猛暑が恋しいとまでは言わない。入道雲を見ないまま夏が終わるのは、あまりにも寂しすぎる。

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