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【正論・戦後72年に思う】「平和」の中に滅びた日本人の徳 「戦争」と同様に「平和」も危険なのだ 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司

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【正論・戦後72年に思う】
「平和」の中に滅びた日本人の徳 「戦争」と同様に「平和」も危険なのだ 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司

 戦後72年、大東亜戦争の戦没者に対する深い鎮魂を心に思う夏である。まさに深い鎮魂の心に沈潜しなければならないのであって、戦争の犠牲者を悼むというようなとらえ方をしてはならない。長い平和の中で、英霊に対して礼を失するような振り返り方が目につくように感じられる。戦没者は、世界史の必然の中で国家の運命に殉じたのであって、決して犠牲者などではない。

≪内部からいつもくさってくる≫

 茨木のり子の詩「内部からくさる桃」の中に「内部からいつもくさってくる桃、平和」という一行があるが、過去の歴史の悲劇に対する敬虔(けいけん)の情の喪失は、今日の日本の「内部からくさって」いる「平和」の腐臭の一例であろう。

 72年間の長きにわたり自立的でない「平和」が続いてきた日本に思いを致すとき、『イタリア・ルネサンスの文化』などの名著で知られる19世紀スイスの歴史家・文化史家ブルクハルトの『世界史的諸考察』(藤田健治訳)の一節が思い出される。およそ150年前に語られたことであるにも拘(かか)わらず、現代の日本の状況が言われているかのような錯覚さえ覚える。

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