産経ニュース

【ときを紡ぐ絵本 親子とともに】『じごくのそうべえ』 みんなで笑い転げる

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【ときを紡ぐ絵本 親子とともに】
『じごくのそうべえ』 みんなで笑い転げる

じごくのそうべえ(童心社) じごくのそうべえ(童心社)

 私が幼稚園に勤務していた頃、受け持ったクラスごとに子供たちのお気に入りの絵本がありました。昭和53年に童心社から刊行された『じごくのそうべえ』(田島征彦作・絵)はその中の一冊です。

 物語の原作は、上方落語、桂米朝の「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」。綱渡りの最中に綱から落ちてしまった軽業師(かるわざし)のそうべえは、地獄に超特急で向かう火の車で、山伏のふっかい、歯抜き師のしかい、医者のちくあんと出会います。三途(さんず)の川を渡り、閻魔大王の前に連れて行かれた4人は地獄行きを命ぜられます。糞尿(ふんにょう)地獄、人呑鬼(じんどんき)の腹の中、熱湯の釜、針の山へと次々にほうり投げられるのですが、4人は知恵を働かせて地獄の鬼たちをてこずらせ、この世に送り返されてしまうというお話です。

 この絵本を初めてクラスで読んだとき、「じごく」という響きに一瞬たじろいだ子供たちでしたが、すぐに、型絵染(かたえぞめ)という日本独特の技法の色使いで描かれたユーモラスな絵に目を見張りました。読み手は息つく暇もないのですが、登場人物の会話で進んでいく物語の、リズミカルでテンポの良い関西弁に耳を研ぎ澄ませました。そして、何といっても理屈抜きの「おもしろさ」に子供たちは笑い転げ、みんなの笑いが渦になっていきました。

続きを読む

「ライフ」のランキング