産経ニュース

【デジタルハリウッド・アースプロジェクト2017】地球規模の課題 映像通じ喚起

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【デジタルハリウッド・アースプロジェクト2017】
地球規模の課題 映像通じ喚起

 心を揺さぶるクリエーティブの力で、地球規模の課題や世代を超えて存在する問題に目を開かせる「デジタルハリウッド・アースプロジェクト2017」の制作発表会が7月12日に開催された。作品の一つ一つから共感に満ちたメッセージが発信され、解決に向けた一歩を踏み出させる大きな力が会場を包み込んだ。

テーマ「高レベル放射性廃棄物の処分問題に関する認知拡大」

さまざまな視点から課題を捕らえ、多彩な表現による作品が会場を沸かせた(松本健吾撮影)

(さまざまな視点から課題を捕らえ、多彩な表現による作品が会場を沸かせた(松本健吾撮影))

 IT関連やデジタルコンテンツの人材を育成する大学、大学院、スクールを運営するデジタルハリウッド(東京都千代田区)は平成24年から「アースプロジェクト」を実施し、地球の未来に向けたアプローチを続けている。今回はNUMO(原子力発電環境整備機構)の協力を得て、原子力発電などで発生する「高レベル放射性廃棄物の安全・確実な地層処分」がテーマ。5チームが非常に重要でありながら日常的な関心を寄せることの少ない課題に気づき、考えるきっかけを与える作品を制作した。

 2児の母でもある社会人スクール生は「重くなりがちなテーマを生活の中に落とし込みたい」と、暮らしの中で生まれるゴミとともに高レベル放射性廃棄物をかわいらしいアニメ仕立てで表現。ゲスト審査員を務めたタレントでフリーキャスターの大東めぐみさんは「お母さん目線のほほえましい表現でセンシティブになりがちな問題を扱い、幅広く訴えるきっかけを作っている」と共感を寄せる。

 大学3年生3人に1年生が加わったチームは、ダンス、バンドなどで夢を追う若者を描き、「問題を直接に伝えるよりも自分たちが考えることとしてアプローチした」という着想が光る。同じくゲスト審査員でタレント、女性向け動画サイト編集長の坪井安奈さんは「身近ではない問題を自分のこととして考えさせている」と評価する。

 廃棄物を「核の化身」と擬人化し、東京郊外の喫茶店から生配信する設定の作品は大学3年生のチームらしいリアルな若者視線に笑いが巻き起こる。さらにポスターやデジタルサイネージ(電子看板)を使った学内でのPR活動も行われ、大学院生に韓国人留学生も加わったチームは「ストーリー仕掛けで見てもらえる作品を」と愛らしいキャラクターが穴を掘り始め、地下深くに到達して地層処分を行う3つのポスターを週替わりで掲出して話題を集めたという。

 最優秀に輝いた作品は、地層処分の必要性と手順を分かりやすく紹介しながら最後にその映像を見ていた若い女性を映し出し、問題をひとごととしてしまう幕切れが高い評価を受けた。

さまざまな視点から課題を捕らえ、多彩な表現による作品が会場を沸かせた(松本健吾撮影)

(ゲスト審査員を務めた左から坪井安奈さん、大東めぐみさん。右はデジタルハリウッド大学の杉山知之学長)

 審査員長を務めたデジタルハリウッド大学の杉山知之学長は「若い世代が社会に目を向け、大きな問題に向き合う貴重な機会を与えられた」と感謝する。さらに学長は「担うべき課題を自ら考え、行動した経験はデジタルメディアを通じて人と人が結びつく、より良い未来のための第一歩につながっている」と多様な表現が会場を彩った充実の時間に思いを寄せていた。

見た人それぞれの考えるきっかけに

さまざまな視点から課題を捕らえ、多彩な表現による作品が会場を沸かせた(松本健吾撮影)

最優秀作品「on Your mark」

(大学3年生、三代飛翔さん、吉兼尚聡さん、吉原茂希さんの作品)

(作品概要)

 日本における現状と最終処分のプロセスをコミカルで分かりやすいコンピューターグラフィックスで紹介。最後には、その映像を見ていた若い女性に「何とかなるって」と語らせて多くの人が抱えた無関心さをあえて示し、視聴者自身が問題の当事者であることに気づきを与えている。

(出品者コメント)

 原子力について一から勉強し、NUMOを訪ねて当事者の視点も得ながら、重いテーマをできるだけやわらかく表現し、理解しやすいものをと考えた。映像を見た人それぞれがスタートラインに立ち、自分はどうするかを考え始めるきっかけになればと制作した。

(講評)

 杉山学長 「最後で女性に日本国民を代表するかのような発言をさせ、あっと思わせた。客観的な視点を持ち、インパクトのある作品になっている」

 大東さん「語りかけるようなテンションがあり、メッセージを感じた。最後に考えさせられる問いかけがあり、続きが見たくなる」

 坪井さん「どういう思いで作っているのかが感じられ、上からでも下からでもない良い立ち位置からメッセージが伝わってきた」

人と人つなげより良い未来へ

さまざまな視点から課題を捕らえ、多彩な表現による作品が会場を沸かせた(松本健吾撮影)

(「デジタルコンテンツは人と人をつなぐメディア」と語る杉山知之学長(松本健吾撮影))

 難しい問題であっても、そうか分かったと思わせることは、人を楽しませることです。そのためには自己満足ではなく、人とつながっていくことが大切です。

 難しいことを分かりやすく伝える。これはまさにデジタルメディアが持っている大きな可能性です。制作するための道具や機材はプロと同じか同レベルのものが簡単に手に入るという時代にあって、アイデアとコンセプトさえあれば学生にも非常にクオリティーの高いものを生み出すことができます。インターネットがあり、そこに動画の投稿サイトがあって、発表し、拡散させることのできる場所があります。おもしろいもの、琴線に触れるものであれば、どんどん広がっていくという夢があります。

 これからは多くの仕事をAI(人工知能)とロボットがすることになるでしょう。それでは人間らしいこととは何でしょう。人の心は人でしか動かせないと思います。人を感動させ、心に呼びかけることができるのは、やはり人です。

 人は論理的な説明や合理的な数字だけで全てが分かりましたとはなりません。人と人がどのようにして理解を深めていくのかを考えなければなりません。全ての人が納得し、支持するものなどあるのでしょうか。それでも人は、どこかで合意をしていくものです。そのプロセスの中で、学生たちが発揮した表現する力が役立っていくのです。表現し、何かを伝えることで、より良い未来につなげてほしいと願っています。

このニュースの写真

  • 地球規模の課題 映像通じ喚起
  • 地球規模の課題 映像通じ喚起
  • 地球規模の課題 映像通じ喚起
  • 地球規模の課題 映像通じ喚起

「ライフ」のランキング