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【書評】純朴青年に下された命令 『チャップリン暗殺指令』土橋章宏著

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【書評】
純朴青年に下された命令 『チャップリン暗殺指令』土橋章宏著

 チャプリンの暗殺計画は実際にあったようで、高野も実在の人物だ。歴史的事件の中にフィクションが自然に織り込まれていて、どこに境目があるのかわからないほどだ。

 著者の土橋章宏氏は『超高速!参勤交代』で脚光をあびた新鋭。同名映画の脚本も自身が手掛けた。シナリオ作家らしいシーンの切り替えが早い簡潔な文体が実に小気味いい。戦争の足音が聞こえる暗い時代をもコミカルに、所々、笑いをとりながら描いている。

 後半、作者はチャプリンの人間性にも多く触れている。好奇心旺盛で美食家でありながら、常に貧しい人たちを気にかけていたようだ。

 「喜劇の本質は哀しみだ」と語るチャプリン。この言葉とともにほろ苦いラストが心に残る。肩の力をぬいて楽しんでほしい一冊だ。(文芸春秋・1400円+税)

 評・赤羽じゅんこ(童話作家)

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