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道筋をつけられるか 核のごみ問題

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道筋をつけられるか 核のごみ問題

 商業用の原発の稼働から半世紀余り。わが国には原発に使用された燃料由来の高レベル放射性廃棄物(いわゆる核のごみ)が発生している。この廃棄物については、地下深くに埋設して処分する「地層処分」を行う方針だが、処分地選定は進んでいない。国は、この問題に対する国民の関心や理解を深めるため、地層処分に関する地域の科学的特性について、日本地図を色分けして示す「科学的特性マップ」の作成を進めている。議論を深めるためには何が必要なのか。 NPO法人社会保障経済研究所代表の石川和男氏とウェブメディア「Japan In-depth」編集長、安倍宏行氏、 NPO法人国際環境経済研究所理事で元キャスターの松本真由美氏の3人に話し合ってもらった。〈聞き手 iRONNA編集長 白岩賢太〉

左から安倍宏行氏、松本真由美氏、石川和男氏

左から安倍宏行氏、松本真由美氏、石川和男氏

左から安倍宏行氏、松本真由美氏、石川和男氏

現世代の責任

 ――北欧フィンランドは世界に先駆けて核のごみの最終処分場を決めた。彼らはこの問題を「現世代の責任」と受け止め、解決に向けて一歩踏みだしたが、振り返って日本人がこの難題と向き合うにはどうすればいいか。

 石川 福島第一原発の事故が起きてから、原子力に対するアレルギーが広がり、日本人にとって現世代の責任は原発を止めることだという風潮すらある。でも仮にすべての原発を止めることになったとしても、これまで使ってきた分の廃棄物は既に存在しているのだから原発にどう向き合おうとも、最終処分地は必ず決めなければならない。そのことの共通理解を議論の出発点にできるのではないか。

 松本 フィンランドだけでなく、スウェーデンやフランスなども処分場の建設に向けて着実に進展が見られます。次世代に問題を先送りしないという意思が重要です。日本でも、まずは地層処分事業を理解し、地域と共生してやっていけるのか、きちんと議論する。まさに今がその起点なのだと思います。

 安倍 議論の先送りというのは、何も最終処分の話だけじゃない。ややこしい問題は極力触れたくないという雰囲気が日本社会全体にある。都合の悪いことから目をそらし、次世代にツケを回すやり方は「究極の無責任」だと思う。メディアも扱いにくい問題を取り上げようとはしないから、情報の受け手である国民の理解もなかなか進まない。改めてメディアの責任は大きいと思う。

作成が進む科学的特性マップ

 ――いかにして国民的議論を巻き起こすか。国が現在作成中の「科学的特性マップ」は最終処分問題への関心を高め、議論の呼び水になると思うか。

左から安倍宏行氏、松本真由美氏、石川和男氏

 安倍 このマップというのは、地層処分を行う上では火山や活断層などに注意しなければならないということや、そうしたことを考慮した場合に日本各地の地下環境は科学的にどういう特性があるのか、ということを知ってもらうことが目的。そこをきちんと最初に理解してもらわないと。こうしたマップを使いながら、安定した岩盤に埋設すれば相対的にリスクを減らせるということを説明していく必要がある。

 石川 まずは国が具体的な取り組みを見せることが大事だと思う。マップを提示すれば、いろいろな意見が出てくると思う。地層処分という方法に不安の声もあるだろう。そうした意見に対して、何度も何度も丁寧に説明する。地道な努力を続けることが大事だと思う。

 松本 海外の状況というのも合わせて伝えていく必要があるでしょうね。シンポジウムなどでも「海外はどうなんですか?」とよく聞かれます。処分に向けた取り組みが進んでいるフィンランドやスウェーデンでも全国の科学的特性を示して地域の理解につなげたそうです。そうした事例は大いに参考にすべきではないでしょうか。

議論の深掘りのためには

 ――調査を受け入れていただける地域を見いだしていくためには、議論をどう盛り上げていくかだが、今後、どういったアプローチが求められるか。

 松本 スウェーデンで処分場を受け入れた自治体の長から、「ごみ捨て場だとは思っていない」という話を聞いたことがあります。「地域に最先端の技術や研究者が集まるんだ」と。発想の転換というか、ちょっと違った観点から前向きに考えてもいいのではないでしょうか。

 石川 北海道にある地下環境を調査する研究施設(幌延深地層研究センター)を見学したことがあるが、あれを目の当たりにすれば、処分場はただのごみの処分場ではないと感じると思う。

 安倍 そうなんです。処分に向けた取り組みを着実に進めることは日本の競争力にもなると思う。海外では原発をたくさん造ろうとしており、いずれそうした国でも高レベル放射性廃棄物の最終処分が大きな壁となって立ちはだかる。その時、日本の技術や経験を輸出することだってできる。それが原発で世界をリードする日本の責任でもあると思う。

地層処分に関する詳しい情報はこちら

2017年5月・6月に開催した全国シンポジウム「いま改めて考えよう地層処分~科学的特性マップの提示に向けて~」の開催報告はこちら

提供 NUMO(原子力発電環境整備機構)

【鼎談者略歴】

石川和男(いしかわ・かずお)

NPO法人社会保障経済研究所代表。昭和40年、福岡県生まれ。東大工学部卒。平成元年通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー・環境、中小企業など各般の政策に携わり、平成19年退官。著書に『原発の正しい「やめさせ方」』(PHP新書)など。

安倍宏行(あべ・ひろゆき)

Japan In-depth』編集長。昭和30年、東京都生まれ。慶應大卒。平成4年にフジテレビ入社、ニューヨーク支局長、解説委員などを歴任。その後、報道番組「ニュースジャパン」キャスターを務める。平成25年にフジテレビを退社し、同年にウェブメディア「Japan In-depth」を立ち上げる。

松本真由美(まつもと・まゆみ)

NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員。上智大学卒業後、テレビ朝日報道局、NHKBS1のキャスターを経て、平成20年度から東京大学の環境・エネルギー分野の人材育成プロジェクトに携わる。平成26年度から東京大学教養学部環境エネルギー科学特別部門客員准教授に着任。

連載【10万年後の安全-「信頼」と「責任」の意味】

(1)フィンランドはなぜ核のごみ処分を「決断」できたのか

(2)地震大国ニッポンで核のごみは埋められるか

(3)核のごみの最終処分をどう受け止めたか オンカロの町で出会ったある少年の思い

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