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【日曜に書く】夏は痴漢の季節…「冤罪」撲滅を願う 神さまはお見通しと信じて 論説委員・清湖口敏

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【日曜に書く】
夏は痴漢の季節…「冤罪」撲滅を願う 神さまはお見通しと信じて 論説委員・清湖口敏

 新聞などでは痴漢の冤罪を防ぐ心得を紹介した記事も見られるようになった。ある弁護士は、疑われたら逃げるのではなく、名刺で身分を明かし、上手にその場を立ち去れと助言する。弁護士を呼べればなおよいとのことである。一方で、事務室に連行されたら逮捕は免れないとも書かれてあったのには驚いた。これではまるで赤熱した鉄片を握らせ、手がただれたら有罪とする昔の裁定=火起請(ひぎしょう)=と変わらず、疑わしきは罰せずどころか、端(はな)からクロと決めてかかっているようなものだ。

 冤は●(ワ冠、覆い)から▲(「冤」からワ冠をとった「兎」の異体字、ウサギ)が脱出できない意を表す漢字だが、冤罪被害者も▲(「冤」からワ冠をとった「兎」の異体字)と同じで、駅事務室に入ったが最後、哀れ囚(とら)われの身となるのか。

不条理な現実

 そもそも弁護士を呼べと言われても、すぐに弁護士と連絡がつく者なんて限られていよう。上手に立ち去れ? そんなに首尾よくいくものだろうか。駅事務室で身の潔白を訴えるよりも、まず立ち去れとは、結果的に逃げたも同然ではないか。

 私たちは子供の頃から「身に恥じるところがなければ決して逃げるな」と教わってきた。そんな世道にも背き、法律家自らに“逃げろ”と言わせるようなこの国の法治とは、また倫理とは、一体何なのだろう。

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