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【書評倶楽部】コラムニスト・上原隆 『階段を下りる女』(ベルンハルト・シュリンク著)…真正銘の大人の小説

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コラムニスト・上原隆 『階段を下りる女』(ベルンハルト・シュリンク著)…真正銘の大人の小説

コラムニストの上原隆さん コラムニストの上原隆さん

 67歳の私は、日頃から「大人の小説」が読みたいと思っている。同じような気持ちの人は案外多いのではないだろうか。今回紹介する本は、内容といい文体といい正真正銘「大人の小説」だ。

 主人公のドイツ人弁護士が仕事で来たシドニーで、偶然、一枚の絵と再会する。

 全裸で階段を下りる女の絵だ。

 40年前、20代の彼はこの絵を見て恋に落ちた。弁護士になったばかりの仕事で、絵のモデルのイレーネと知り合い、彼女がこの絵を盗むのを助ける。2人で逃亡し、結婚するつもりだった。が、あとで合流するといったきり、彼女は絵とともに姿を消した。その後、彼は別の女性と結婚し、3人の子供を育て、60代となり、シニア弁護士として働いている。

 絵の存在から、イレーネがオーストラリアにいることを知り、会いに行く。「なぜ、連絡をくれなかったのか、なぜぼくを傷つけたのか」。彼は過去にケリをつけたかった。彼女がこの地にいるのは、若い頃の政治犯罪で指名手配され、身を隠していたのだ。年を取り、皺(しわ)を刻み、体は病に侵されていた。彼女がいう。「あなたは変化の少ない生活を送ったでしょ。わたしの人生は床に落ちて飛び散った花瓶のようなものなのよ」

 さて、再会した2人はどうなるのだろう。

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