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谷崎潤一郎、晩年の日記8冊 右手の痛みも衰えぬ創作熱

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谷崎潤一郎、晩年の日記8冊 右手の痛みも衰えぬ創作熱

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 作家、谷崎潤一郎(1886~1965年)の晩年の日常が記された日記8冊の内容が初公表された。体調の異変に悩まされながらも創作への情熱を燃やす文豪の姿が伝わってくる貴重な資料。今月刊行された『谷崎潤一郎全集』(中央公論新社)第26巻に収められている。

 日記は昭和33年7月11日~38年2月4日までの4年半に及び、すべて市販の日記帳に書かれていた。谷崎の没後、松子夫人が中央公論社(当時)に提供した資料の中に含まれていたという。谷崎は生前、古い日記は焼き捨てた、などと随筆に記しており、今回の8冊も一般にはほとんど存在が知られていなかった。全集編集委員の千葉俊二・早稲田大教授は「和紙に書かれた古い日記と違い、製本された日記帳は燃やすのが難しく、結果的に残されたのではないか」とみる。

 8冊が書かれたのは『瘋癲(ふうてん)老人日記』(37年刊)などの晩年の代表作が生まれていく時期にあたる。右手が不自由になった谷崎が口述筆記へと移行するころでもあり、一冊目はほぼ谷崎の自筆だが、その後は秘書らの代筆が多い。昭和36年6月6日には〈一種特別の療法で右の肩から腕と手へかけての苦痛をとる〉〈冷感やマヒ感は残る〉と、体の不調でさまざまな治療を試す姿を記述。一方で〈原稿四枚進行〉などと変わらず執筆に傾注する様子も細かくつづられている。

 千葉教授は「小説を書き続けるために自らの体を懸命に気遣う。谷崎のそんな晩年の思いが伝わり興味深い」と話す。(海老沢類)

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