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難聴者向けバリアフリー 言い換えで聞き取りやすく

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難聴者向けバリアフリー 言い換えで聞き取りやすく

 「年齢とともに、相手の話している声が聞きづらくなる」-。そんな高齢者の悩みを解決しようと、話し掛ける側が言い換えや発声を工夫するバリアフリーの取り組みが注目されている。言い換え用の電子辞書が開発され、企業向け研修会も開かれている。難聴は認知症などのリスク要因とされており、「聞こえないから」と閉じこもりがちな高齢者の介護予防にもなりそうだ。

 ◆適切な言葉探し

 東京・羽田空港のソラシドエア東京支社。客室乗務員らを対象にした「聞き間違えない話し方講座」が開かれた。

 「年を取って難聴になった人は音が濁って聞こえる場合があるので、大きな声を出すだけでは不十分。低い声でゆっくりと。言葉の言い換えも有効です」

 講師を務めたのはパナソニック補聴器の光野之雄さん。「例えば『握手』と『拍手』、『佐藤』と『加藤』は紛らわしい。まず子音が聞き取りにくくなるからです。『手を握る』と言い換え、名前をフルネームにしてみてください」と話す。

 同じグループのパナソニックは「言葉のバリアフリー」社会を目指すプロジェクトの一環として、AI(人工知能)による言い換え用デジタル辞書を開発。参加者はこの辞書を片手に、適切な言葉を探した。

 参加者からは「お客さまが『定刻』を『警告』、『整備』を『警備』に聞き間違えることがある」との声も。客室乗務員の女性(30)は「ゆっくり話すようにしているが、今後は言い換えの工夫もしたい」と話した。

 ◆早めの対処重要

 NPO「日本スピーチ・話し方協会」代表の大橋照子さんは発声による「バリアフリー化」を提案する。「小声でも口を大きく開けるのがコツ」とアドバイス。「高齢者側も発声の機会を積極的につくり若々しい声を保てば、コミュニケーションしやすくなる」

 加齢による難聴は高音域などを中心に30代ごろから次第に進むとされるが、気が付かない人も多い。慶応大の小川郁教授(耳鼻咽喉科)は「高齢化や、騒音などの環境にさらされることが難聴の要因」と指摘。ヘッドホンで長時間、大音量の音楽を聴くことも避けた方がいいという。

 小川教授は「難聴が認知機能の低下や、鬱病のリスクを高めるという研究結果がある。話が分からないから外出せず閉じこもる悪循環も起きやすい。脳が受け取る言語情報を減らさないよう補聴器などで早めに対処することが重要」と話す。

 ◆最新技術応用で

 一方、最新技術で聞きにくさを補う研究や実用化も進む。音声認識システムに詳しい九州工業大の中藤良久教授によると、手元で音を拡大するスピーカーや、高齢者が聞き取りやすくする機能が付いたテレビなども商品化されている。病院で名前を呼ばれた時に携帯電話が音声を拾い、振動で伝えるといった研究もある。

 中藤教授は「高齢化で難聴の人は増えるが、補聴器そのものの高機能化や支援機器の開発で、難聴になった高齢者の生活の質を上げられる可能性は高い」とみている。

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