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【話の肖像画】俳優・仲代達矢(4)「二度と黒澤組には出ないぞ、と思った」

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【話の肖像画】
俳優・仲代達矢(4)「二度と黒澤組には出ないぞ、と思った」

「乱」での一場面 (c)KADOKAWA 1985 「乱」での一場面 (c)KADOKAWA 1985

 〈初めての黒澤明監督作品は、「七人の侍」(昭和29年)。通りすがりの浪人役だった〉

 まだ俳優座養成所の頃です。ただ歩くだけの役ですが、黒澤監督から何度も「ダメ」を出され、午前9時から午後3時までやらされました。「俳優座は歩き方も教えないのか」と言われ、最後は「いいや、OK」。屈辱でした。「立派な役者になって、二度と黒澤組には出ないぞ」と思いましたね。

 〈その後、「人間の條件」などで仲代さんに注目した黒澤監督は、「用心棒」(36年)で三船敏郎さん演じる三十郎の敵、卯之助役を打診する〉

 もちろん断りました。いやあ、気持ちよかったな(笑)。最後は黒澤監督に呼び出され、「なぜ嫌なんだ。脚本は読んだのか」「面白かったです」「じゃあ、なぜ」といったやりとりをしました。最終的に引き受けましたが、着流しにマフラー姿、拳銃片手の卯之助役は面白かった。三船さんとの共演も楽しかったですね。きまじめでいつでも全力。だからテストなしでいきなり本番ということが多かった。

 次に「椿三十郎」(37年)の話が来まして、今度は即、OKしました。チャラチャラした卯之助と違い、剛直な武士、室戸半兵衛役でした。

 三船さんとの決闘場面は、2人とも相手の手を知らないまま、いきなり本番。私が真上から刀を振り下ろすと、一瞬早く三船さんが抜いて、私の心臓を突く。仕込んでいたタンクから大量の血しぶきが噴き出し、私が驚いた表情のまま倒れる。事前に知っていたら、あの演技はできませんでしたね。

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