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【文芸時評】もっとエロスの香りを 6月号 早稲田大学教授・石原千秋

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【文芸時評】
もっとエロスの香りを 6月号 早稲田大学教授・石原千秋

石原千秋氏 石原千秋氏

 この文章が公になる28日の午後には、僕は日本近代文学会の大会の企画「一〇一年目の漱石--なぜ読まれてきたのか」シンポジウムのパネリストとして壇上に立っているだろう。2年続きの漱石記念イヤーは出版界最後の文豪祭りになるだろうから、とことん付き合おうと決めていた。28日は朝から夕方まで漱石の企画だけで構成される珍しい大会になる。

 僕は「一般読者と研究との架橋」を研究の動向を踏まえて話してほしいと依頼を受けた。会場にはまさに「一般読者」の方々にも来てほしいと。その依頼に忠実に応えるだろう。フェミニズム批評が近代文学研究に標準装備(?)されて以来、ある小説に「他者としての女性」が書いてあれば(正確には「書いてあるように読めれば」とするべきか)近代文学として「合格」みたいな風潮があった。これは60年ほど前の江藤淳『夏目漱石』にまでさかのぼることができる。なんと言っても『明暗』のお延である。それに異論はないが、「他者としての女性」という概念はあくまで男性視点から見たものだ。男性作家だからそれで「合格」とは、仮に女性研究者であっても、学会版道徳の時間の評価軸が依然として男性視点にあることを雄弁に物語っている。

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