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【きのうきょう】夕焼け

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【きのうきょう】
夕焼け

 和歌山市 細川江美子 68 無職

 かつては家の近所には田んぼが一面に広がっていたが、商業施設ができて様変わりした。農家も高齢化と後継者不足とで田んぼを維持することが難しくなり手放すのだろう。

 かつては愛犬との散歩道でもあったが、私は昨年3月まで塾の講師をしていて、夕方の時間帯は仕事で教室の中だったので、この時間は教室の外にどんな世界が広がっているのか知らなかった。

 息をのんだ。西の空があかね色に染まっている。美しくて、どう形容すればいいのか言葉が見つからない。見慣れた田んぼが消えていくということに感じる郷愁の中で、ずっと昔に見た景色の記憶がよみがえってきた。人生を季節に例えると「秋」にさしかかった。穏やかに流れる時間の中で、これまで歩いてきた道のりを振り返る。長く一緒に暮らした母は一昨年他界した。すでに夫も亡くなり、今は独り身。自分の姿が夕焼けと重なった。沈み行く太陽はなんて美しいのだろう。

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