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【書評】文芸評論家・水口義朗が読む『夜の谷を行く』桐野夏生著 全力でリンチ… 連合赤軍の革命幻惑というアリ地獄に落ちた女性描く

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【書評】
文芸評論家・水口義朗が読む『夜の谷を行く』桐野夏生著 全力でリンチ… 連合赤軍の革命幻惑というアリ地獄に落ちた女性描く

『夜の谷を行く』桐野夏生著(文芸春秋・1500円+税)評・文芸評論家・水口義朗 『夜の谷を行く』桐野夏生著(文芸春秋・1500円+税)評・文芸評論家・水口義朗

 本書の主人公西田啓子は、5年余の刑期を務めて出所してから40年、目立たないように静かに生きている。

 啓子が関与した事件のために、重役候補だった父親は退職を余儀なくされ、娘の服役中に肝硬変で亡くなった。母親もその10年後、肝臓がんで死亡。妹の和子が離婚した翌年のこと。両親の早過ぎる死は裕福な家庭に育ち、お嬢さんと言われた長女、啓子の“大いなる逸脱”に原因があった。事件はあまりにもおぞましい結末を世にさらし、社会的には、醜聞として葬られた。

 啓子の犯した“大いなる逸脱”とは? 私立小学校の教師を1年務めてから、24歳のとき、革命左派の活動に入ったことに端を発していた。

 今年は一連の連合赤軍事件のうち、あさま山荘事件発生から45年。銃による革命戦争を目指して群馬・榛名山中に籠もり、44日間に12人もの同志を「総括」という大義名分によるリンチで死亡させた。

 本書は現実のディテールとフィクションによって、迦葉(かしょう)山ベースで埋葬班を務めさせられ、君塚佐紀子と脱走し、警察につかまった2人を通して、忘れてしまいたい過去を解き明かす。

 連合赤軍のいう“革命”は結局、全力で殴る、蹴るというリンチに。それが思想的根拠となる恐るべき規律だ。

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