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【話の肖像画】前衛芸術家・篠原有司男(4) 憧れのNYで妻と格闘生活

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【話の肖像画】
前衛芸術家・篠原有司男(4) 憧れのNYで妻と格闘生活

ニューヨークの自宅ロフトの屋上で制作。洗濯物を干しているのが妻、乃り子さん (1985年ごろ) ニューヨークの自宅ロフトの屋上で制作。洗濯物を干しているのが妻、乃り子さん (1985年ごろ)

 乃り子は僕の友人に連れられて、よくスタジオに遊びに来ていた。置いてあるオートバイ彫刻を見て興味を持っていたんだろうね。僕は貯金通帳も財布も持ってなかったけど、彼女には仕送りがあった。でも僕が酒を飲んで、むちゃくちゃだったから、彼女の仕送りも打ち切られてしまった。僕はよく「アートと格闘してきた」なんて言われるけれど、乃り子は「生きていくこと自体が格闘でサバイバル」って言っている。友人がやって来ると、僕は飲み過ぎて訳が分からなくなって暴れてしまう。リビングのテーブルには包丁でたたいた跡が今も残っている。10年以上前、調子が悪くなって救急車で運ばれてからは断酒したけどね。

 〈映画「キューティー&ボクサー」には、家賃の支払いや作品の値段のことでけんかする芸術家夫妻の生の姿が描かれている〉

 彼女がニューヨークにやって来たころは弟子のようにこき使っていた。でも彼女の作品が良くなると嫉妬したりしてライバルになった。それもアーティストのさがかな。いまは彼女の絵の方がよく売れている。乃り子はコマンダー(司令官)になった。フォローしてくれるから、うまくいっている。けんかしてもしようがないよね。ともに世界の美術界で勝負しているのだから。(聞き手 渋沢和彦)

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