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【この本と出会った】文教大准教授・酒井信 『風土 人間学的考察』和辻哲郎著 思い出す恩師の福々しい笑顔

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【この本と出会った】
文教大准教授・酒井信 『風土 人間学的考察』和辻哲郎著 思い出す恩師の福々しい笑顔

『風土 人間学的考察』和辻哲郎著 『風土 人間学的考察』和辻哲郎著

  私は早稲田大学の人間科学部の出身である。「なんでそんなとこ受けるの?」と言われながら同系統の学部を4つ受けた。当初の志望は京都大学だった。倫理の授業で知った和辻哲郎の『風土 人間学的考察』に惹(ひ)かれたからである。

 和辻は人間の存在について理性や時間など抽象的な概念で説明する西洋哲学を批判し、人間の存在や文明は「風土」に規定されるものだと考える。風土には東アジアのモンスーン型、西アジアの砂漠型、ヨーロッパの牧場型の3つの類型があり、湿潤な風土を持つ東アジアの人間の精神構造は受容的・忍従的なのだという。「本当かよ」と突っ込みを入れながらも、和辻の大胆な論理には世界を包み込むスケールの大きさがあった。

 もちろん今日の価値観から和辻の著作を「ステレオタイプだ」と批判することは容易である。しかし知的刺激に乏しいが、海と山との距離が近く、風土に恵まれた長崎で生まれ育った私にとって和辻の哲学は身に染みて理解し易(やす)かった。『風土』が発表されたのが昭和維新運動の末、日中戦争前夜の昭和10年。多くの若者たちが故郷の風土を肯定したところから世界の文明を論じる和辻の哲学に「一目惚(ぼ)れ」してきたのだと思う。

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