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【書評】文化部編集委員・喜多由浩が読む 『アリガト謝謝』木下諄一著 東日本大震災で200億円の寄付をしてくれた台湾 日本は思いに応えなくてよいのか

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【書評】
文化部編集委員・喜多由浩が読む 『アリガト謝謝』木下諄一著 東日本大震災で200億円の寄付をしてくれた台湾 日本は思いに応えなくてよいのか

『アリガト謝謝』木下諄一著 『アリガト謝謝』木下諄一著

 物語は「ひとつの花束」から始まる。6年前の東日本大震災発生直後のこと。「日本に平安が訪れますように」のカードとともに、それは日本の文化経済代表処台北事務所(国交がない台湾で日本の大使館の役割を果たすという設定)の片隅に置かれていた。

 花束は日に日に増えていく。それだけではない。台湾の先住民が暮らす「山の学校」で、田舎の役所で、テレビの番組で、誰が言い出すともなく「募金活動」が始まった。町の菓子店は3日間の全売り上げを義援金に充てるキャンペーンを始める…。

 実際に台湾から寄せられた義援金は最終的に約200億円。もちろん世界で断トツだ。台湾で「好きな国」のアンケートをとれば、これまた日本が断トツになる。日本統治時代を知っているお年寄りだけではない。今どきの若者たちも日本が大好き。なぜそこまで愛してくれるのか?

 小説の形を取っているが、台湾在住30年の著者は台湾人のメンタリティーを的確に映し出す。この物語にさっきの答えも隠されている。

 「リップンチンシン(日本精神)」という言葉を口にした人がいた。日本製品が一番、日本人は勤勉で公正。厳しいこともしたが、卑怯(ひきょう)は嫌う。武士道精神があるから。それを実際に体験した世代が次へ次へと伝えてゆく。

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