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【話の肖像画】米国立衛生研究所感染症部長・満屋裕明(2)みんなが使えなければ無意味だ

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【話の肖像画】
米国立衛生研究所感染症部長・満屋裕明(2)みんなが使えなければ無意味だ

裁判は負けたがすぐに第2、第3のエイズ治療薬開発を目指した=1987年、米国立衛生研究所の研究室(満屋裕明氏提供) 裁判は負けたがすぐに第2、第3のエイズ治療薬開発を目指した=1987年、米国立衛生研究所の研究室(満屋裕明氏提供)

 〈エイズが大きな社会問題になっていた米国では高額な薬に反発が広がった〉

 患者やエイズ問題の活動家だけではなく、一般の人までもが「国の医療研究機関が国民の税金を使って開発したものだというのに、なぜこんなに高いんだ」と怒り出しました。別の製薬会社や消費者団体は「特許は無効だ」と提訴。僕も証人として連日、法廷に足を運んで証言台で声をからしました。

 それでも裁判ではAZTを発売した製薬会社が勝訴し、僕たちは開発者と認められませんでした。研究論文できちんと効果を報告し、科学の世界では薬の開発者として広く認められているのにです。多くの研究者が、まだ知的財産権に無頓着な時代ではありました。だが、それゆえに米国民の利益が逸失してしまった。製薬会社の行為は実に不公正でした。

 〈裁判は終わってしまった。それなら第2、第3の薬を作ってやる。それが唯一できることだった〉

 実はAZTの臨床試験が始まって患者への有効性が確認されたとき、僕の反応は「あ、そう」程度でした。なぜなら、既に「ジダノシン」と「ザルシタビン」という第2、第3の治療薬の研究を並行して進めていて、試験管内ではAZTよりも高い有効性が確認されていた。だから、さらなる新薬開発には大きな自信があり、AZTの独占状態を切り崩してやろうと考えていました。

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