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【書評】小説家・浅暮三文が読む『深い穴に落ちてしまった』イバン・レピラ著、白川貴子訳 閉じ込められた兄弟 アリやミミズで飢えをしのぎ、体力が落ちた弟は…

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【書評】
小説家・浅暮三文が読む『深い穴に落ちてしまった』イバン・レピラ著、白川貴子訳 閉じ込められた兄弟 アリやミミズで飢えをしのぎ、体力が落ちた弟は…

『深い穴に落ちてしまった』イバン・レピラ著、白川貴子訳 『深い穴に落ちてしまった』イバン・レピラ著、白川貴子訳

 物語は大団円を迎え、2人を穴に落とした犯人をうかがわす。兄弟が過ごしていた地上世界の様子も。だがそれも匂わせる程度で、読者はなんの暗喩だろうと呻吟(しんぎん)する。さらにサービス精神旺盛にも、異なる謎の用意もあるのだ。

 例えば章ごとに振られた数字は飛び石のような素数だ。これは穴の中で2人が過ごした日数か。だが第一章に1は振られていない。1が素数か否かは数学的に意見が分かれるらしい。あるいは始まりなど些末(さまつ)であると作者はいいたいのか。ちょうど穴を掘り始める1粒の砂のように。

 熱にうかされた弟は失語症となり、脈絡のない言葉を口にする。こちらは数字の暗号となっている。ポーの『黄金虫』も顔負けではないか。残念ながら当方はいまだ暗号解読に至っていない。もどかしい。そこが心地よい。読者諸氏の謎からの脱出を期待する。(東京創元社・1500円+税)

 

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