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【書評】思想家、内田樹が読む『騎士団長殺し 第1部、第2部』村上春樹著 登場人物は村上作品の分身

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【書評】
思想家、内田樹が読む『騎士団長殺し 第1部、第2部』村上春樹著 登場人物は村上作品の分身

『騎士団長殺し 第1部、第2部』村上春樹著 『騎士団長殺し 第1部、第2部』村上春樹著

 でも、これを「どの作品でも同じだ」と難じるのは、ピアノ・トリオに向かって曲は違っても毎回楽器が同じだと怒るようなものだと思う。この作家はそういうやり方で小説を書く人なのだ。

 かつて村上春樹は小説を書くことは「ある種のドアを開け」て、「地下室」に下ってゆくことだと話した。「その中に入って、暗闇の中に身を置いて、また帰ってこられるという特殊な技術」を具(そな)えた人が作家になる。その暗闇の中で作家は「自分の過去」、自分の「魂」に出会うのだ、と。登場人物たちはたぶん作家が「自分の魂」の中で出会ったもののメタファーなのだ。

 作品の意味があるとすれば、それは「ひとつの作品から別の作品へと移行する連続性の中」だろうと作家は語っている。僕はそれを信じる。登場人物たちはどれもこれまでの作品の「アヴァター」たちである。その意匠の差異のうちに、作品の意味も読書の愉悦もともに潜んでいる。(新潮社・各1800円+税)

 評・内田樹(思想家)

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