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【書評倶楽部】コラムニスト・上原隆 『真紅のマエストラ』

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【書評倶楽部】
コラムニスト・上原隆 『真紅のマエストラ』

コラムニストの上原隆さん コラムニストの上原隆さん

 ■すがすがしいほどの悪女

 アート、セックス、サスペンス、この3つが好きな人は間違いなく本書の虜(とりこ)になるだろう。

 主人公のジュディスはモデルのような美しい女性。イギリスの貧しい家庭に生まれ、苦労して絵の勉強をし、どうにか大手の美術品競売会社に就職する。男性の上司が競売にかけようとしている絵を、贋作(がんさく)だと見破り、にらまれてクビになる。

 本筋はこの上司への復讐譚(ふくしゅうたん)なのだけれど、どうやら、背景には男性憎悪があるようだ(もちろん、作者は女性)。

 ジュディスの心の中には一枚の絵がある。17世紀の女性画家アルテミジアの名画『ホロフェルネスの首を斬るユディト』だ。侍女が敵将を押さえつけ、寡婦のユディトが刀で首を半分まで斬っている怖い絵、アルテミジアはかつて強姦(ごうかん)され、その男への憎しみを表現したといわれている。ジュディスにも似たような過去があった。

 そのジュディスは餓(かつ)えたようにセックスを求める。自分の快感を強引に追求し男をモノとして扱う。「私は自分のなかに指を二本入れて、薄い壁越しに男の先っぽの膨らみに触れた」。どんな状態かは本文にあたってほしいのだが、とにかく過激、私はゴクリと唾をのみこんだ。

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