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【書評】新潟大学教授・三浦淳が読む『イルカと日本人 追い込み漁の歴史と民俗』(中村羊一郎著) 偏見を批判するための武器 

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【書評】
新潟大学教授・三浦淳が読む『イルカと日本人 追い込み漁の歴史と民俗』(中村羊一郎著) 偏見を批判するための武器 

『イルカと日本人 追い込み漁の歴史と民俗』中村羊一郎著 『イルカと日本人 追い込み漁の歴史と民俗』中村羊一郎著

 イルカといえば最近は国際紛争の種という印象が強い。和歌山県太地町のイルカ漁を残酷だとするドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』が米国で作られたが、それに反駁(はんばく)する映画『ビハインド・ザ・コーヴ』も日本人女性監督の手で最近完成した。

 ことほど左様にイルカをめぐる価値観の相違は争いのもとになっているが、日本人は昔からイルカを食用にしてきたという事実を明らかにした書物が出版された。

 著者は1943年に静岡市に生まれ、幼時からイルカを食べて育った。ところが東京の大学に進学すると、イルカを食べるなんてと他地域出身の学生に言われたという。流通経路が未発達だった当時、同じ日本でも地域によって食習慣には大きな違いがあったわけだ。しかし本書を読むと、イルカを食べる習慣は海岸部を中心に少なからぬ地方に存在したことが分かる。著者は文献調査や聞き書きによって丹念にそうした例を集め紹介している。料理法についての説明もあるし、食用以外に油や肥料として利用されたことにも触れられている。

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