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【話の肖像画】トラベルライター・兼高かおる(5) 余生は一番いい時期

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【話の肖像画】
トラベルライター・兼高かおる(5) 余生は一番いい時期

「余生は自分が主役」という=平成11年 「余生は自分が主役」という=平成11年

 〈作家の曽野綾子さんとの対談集「わたくしたちの旅のかたち」を出版した。2人はほぼ同世代(曽野さんは昭和6年生まれ)。戦争を体験し、キリスト教系の女学校に通い、戦後は世界を旅し続けたことなど、共通点が多かった〉

 初めてお目にかかったのはもう50年も前かしら。東京・六本木のエクアドル大使館で、お着物姿で姿勢良く立っていらした。「いったいどなたかしら?」と気になって見つめていました。

 最近、曽野さんが新聞に書いていらっしゃる文章を拝見して、戦争体験や外国でのエピソードなど、共通することが多い世代なんだ、ぜひ一度ゆっくりとお話ししてみたい、と思ったのです。

 〈対談は、終戦後に百八十度変わった日本社会のこと、海外生活でのカルチャーショック、日本・日本人論など多岐にわたり、興味深い。その中で兼高さんが戦争中、生涯にたった一度だけ結婚を考えたことがあるという秘話を語っている〉

 学校帰りにお友だちと銀座を歩いていたら、見知らぬ男性から話しかけられたのです。中国の留学生だ、ということでした。ほどなく日本語で手紙が届くようになり、帝国ホテルや横浜の中華街でたびたび会うようになったのです。デートの帰りは必ず送ってくれましたが、私の家が近づくと、決してそばへ寄ろうとはしません。戦況が激しさを増し、彼も帰国することになって「一緒に来てほしい」と言われました。私は母に「あの方と結婚してもいいですか?」と聞いたのですが、母の答えは「いけません」。戦後になって一度だけエアメールが届きましたが、返事は出さず、それきりとなりました。

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