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【本郷和人の日本史ナナメ読み】井伊直虎の謎(下) 実は生年が通説と大きく違う!?

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【本郷和人の日本史ナナメ読み】
井伊直虎の謎(下) 実は生年が通説と大きく違う!?

井伊直孝像(模本、東大史料編纂所蔵) 井伊直孝像(模本、東大史料編纂所蔵)

 論文じゃないんだから、考察を楽しんでないで結論を早く! と担当U氏に怒られましたので、スピード重視でいきます。まず、昨年末に提起された「井伊直虎=男性説」について。傾聴すべき主張ですが、ぼくは今のままでは論争は行き詰まってしまう、と危惧しています。というのはこの説の根拠史料が、『井伊家伝記』と同様、「後の世」に作られた「編纂(へんさん)物」であるからです。Aを論破するには、同じ性質のBでは不足です。結局は水掛け論になる。誰が見てもAを凌駕(りょうが)する品質のCを持ってこなくては。本件においてCとは、井伊直虎と「同時代」の「古文書」に他なりません。

 井伊直虎関連の古文書は極端に少ない。でもそれだけに、現存するものは注意深く読まねばならない。まず、『龍潭寺(りょうたんじ)文書』中の永禄8(1565)年9月15日付の『次郎法師の黒印状』です。これは「次郎法師」という人物が差出人となって、井伊谷(いいのや)龍潭寺の利益を保証する文書。ということは、次郎法師は同寺周辺の土地を実際に支配している人、つまりは井伊家当主と考えられます。それから同性格の他の膨大な古文書との比較が根拠になりますが、権力をもつ次郎法師は僧侶ではない。よほどの特例でない限り、俗人です。次郎法師なんて尼僧の名は聞いたことがない、という前回の指摘を裏付けるかたちになります。

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