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「根付 江戸と現代を結ぶ造形」展 復活、進化する伝統工芸

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「根付 江戸と現代を結ぶ造形」展 復活、進化する伝統工芸

宮澤良舟(三代)「綱渡り」2012年 象牙 宮澤良舟(三代)「綱渡り」2012年 象牙

 古い時代から日本人に親しまれてきた伝統工芸の根付。技巧を凝らした小さな細工物を集めた「根付 江戸と現代を結ぶ造形」展が、東京の三鷹市美術ギャラリーで開かれている。生活様式の変化で衰退したものの、新たな素材や現代的な造形を追求する作家らの登場で改めて注目を集めている。(渋沢和彦)

                     

 精緻な技巧の冴(さ)えを見せ、エキゾチックで西洋彫刻のような雰囲気を醸し出す及川空観の「再生イカロス」。執拗(しつよう)に彫り込みおどろおどろしくドラマチックに表現した伊多呂の「羅生門」。耳の形をした器にひしゃくなどの小物を詰め込んだオブジェのような黒岩明の「小唄十八番(虫の音)」。ユーモアたっぷりでかわいらしい桑原仁の「かになべ」…。

 根付といえば地味で古くさいイメージがあるが、展示作品を見れば、華やかで大胆な造形に驚かされるだろう。

 根付は、印籠やたばこ入れなどを携帯する際に帯に留めるために用いられる細工物。その起源は定かでないが、すでに安土桃山から江戸時代には使用されていたという。庶民文化が成熟した江戸後期に全盛期を迎え、明治期には象牙を使った超絶技巧が流行したが、ファッションの洋装化により徐々に需要がなくなり衰退。そのため、多くが欧米に渡り美術工芸品として新たな価値を見いだされた。日本でも戦後になって再評価の動きが進み、伝統的な根付をコピーするだけの職人技から、独自の造形を追求する作家性の強い作品が登場し、現代に続いている。

 本展は根付専門の美術館「京都 清宗根付館」の所蔵品から、江戸から現代までを網羅した約300点を展示。そのうち8割は現代作品が占めている。

 象牙彫刻師の家に生まれた宮澤良舟(三代)の「綱渡り」は、ナマズのヒゲにカエルがつかまっていて、見るからに愛らしい。同じく象牙彫刻を生業にした家に生まれた齋藤美洲の「豊年踊り」は、小さな彫刻のような精緻な造形が魅力だ。

 異分野からの参入も多く、前述の及川は会社員から独学で学び、黒岩はジュエリーデザイナーから転身した。またカルチャーセンターなどでも人気講座となっており、裾野を広げている。「昔は徒弟制度で閉鎖的でしたが、いまはどんな人でも自由に制作できる。一般的な彫刻と違い、笑いがあるのがいい。あらゆるものがモチーフになり、置物として飾って見ているだけで楽しい」と、三鷹市美術ギャラリーの富田智子主任学芸員は話す。

 平成元年にワシントン条約で国際取引が禁止された象牙は入手できないものの、鹿角やイノシシの牙、金属や石、樹脂などさまざまな素材を利用できる。携帯ストラップに使われるなど用途が広がっており、伝統工芸はさらなる可能性を秘めている。

 3月20日まで、月曜休。一般600円。問い合わせは同ギャラリー(電)0422・79・0033。

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