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【書評】評論家、宮崎正弘が読む『「憧れ」の思想』執行草舟著 強力な磁性を持った思想書

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【書評】
評論家、宮崎正弘が読む『「憧れ」の思想』執行草舟著 強力な磁性を持った思想書

「憧れ」の思想 「憧れ」の思想

 文明論か宗教論か、いや人生論としても読める。音楽、文学、絵画と広範に芸術が論じられているが、本書は強固な思想書なのである。

 人生の骨格をなすのは「憧れ」にあり垂直な生き方を重視する。「人間は宇宙の意思である」「人間だけが精神を志向することが出来るからだ。精神のために死することが出来るからだ。命より大切なものがあるからだ」。それが著者のいう「憧れ」の概念である。

 執行氏の人生の信念が本書に叩(たた)きつけられている。しかし「人間中心といいながら、人間の精神的な崇高や恩に基づく真の絆を一切捨て去った思想のもとでは、生命が発展する術もない」という文章など左翼的ヒューマニズムの偽善を暴く一方でAI(人工知能)とかの技術革新に狂奔する文明社会を非情な目で見通し、やがて「社会は乱れ」「人間の文明は破綻してしまう」と警告するのである。

 なぜなら中世では人間の心を憧れが支配していたからこそ、中世を経過した日本が真の近代化と工業化をなしえた。中世は躍動的で「不合理と不幸を、中世人はその身に受け続けた」。だからダビンチが出た。ミケランジェロが出た。日本では鎌倉に仏教が高みに達した。

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